
最近、若い女性を中心に矯正治療への関心が高まっています。皆さんの中にも、「昔から歯並びが悪くて、コンプレックスだ」とか、「矯正治療を考えているのだけど」という人も多いのではないでしょうか。矯正治療は多くの場合、自費診療です。そのため、どうしても高額な治療になってしまいます。しかし、矯正治療にはそれを上回る多くのメリットがあります。そして全ての人に矯正治療はおすすめであり、値段以上の価値のある治療です。多くの方が、矯正治療を「歯にワイヤーをつけて動かしていく」とイメージすると思います。近年、材料の進歩に伴い、より目立ちにくい矯正治療も増えてきています。今回は、矯正治療にはどのような種類があるのかを理解し、自分にとってベストな治療はどれなのかを選択するための手助けになる情報を一緒に見ていきましょう。
矯正治療とは
まず、そもそも矯正治療とはどのような治療でしょうか。皆さんの矯正治療のイメージは「きれいで美しい歯並びを手に入れるための治療」ではないでしょうか。それも間違いではありません。しかし、矯正治療の真の目的は「きれいな歯並びを手に入れること」ではありません。矯正治療の真の目的は「口腔機能の改善とそれに伴う患者さまの生活の質の向上」です。そのため、矯正治療を行うことできれいな歯並びを手に入れることはもちろんのこと、食べやすい噛み合わせであったり、喋りやすい歯並びであったり、お口の本来の機能を改善すること目指しています。さらに最終的には、患者さまに満足いく人生を送ってもらうことを目指そうとする治療です。イメージと違って奥が深い治療だと思いませんか。
歯並びが悪いことを歯科の専門用語で「不正咬合」といいます。この不正咬合には、多くの種類があります。代表的なものは歯並びがガタガタしている叢生や奥歯で噛んだ時に前歯が重なっていない開咬、八重歯などに代表される転位などがあります。
これらの不正咬合によって見た目が悪くなってしまうことはもちろんのこと、食べ物を噛み切るのに苦労したり、会話をするときに聞き取りにくい言葉になってしまったりとさまざまな障害が生じます。このコンプレックスによって、人と話すことが苦手になり、引っ込み事案になる人もいます。矯正治療はこのようなコンプレックスを取り除き、ハッピーに生活・生きていくためには、うってつけの治療です。諸悪の根源である不正咬合を自身の歯を使って改善し、機能や見た目を改善できる矯正治療を始めようという気持ちが強くなったのではないでしょうか。それほど、歯科医療の従事者は矯正治療をオススメしているのです。
矯正治療の種類
矯正治療にはさまざまな目的があり、それによってもたらされるメリットはとても多いです。これを得るためには、矯正装置が必須です。矯正治療の装置には大きく分けてワイヤー矯正とアライナー矯正の2種類があります。また、ワイヤー矯正は、ワイヤーを歯の表側に装着するもの(今回は便宜的に「ワイヤー矯正」といいます。)と裏側につけるもの(今回は便宜的に「裏側ワイヤー矯正」といいます。)の2種類に分けられます。よって、矯正治療方法の種類は、大きく3種類があります。それでは一つひとつ特徴を見ていきましょう。
1.ワイヤー矯正(表側マルチブラケット矯正)
まずは、ワイヤー矯正です。これは、皆さんが最もイメージする矯正治療だと思います。歯の表面にワイヤーを固定するためのボタン(ブラケットといいます)をつけ、これにワイヤーやゴムをつけることで、歯を理想的な位置まで動かす治療方法です。必要に応じて、骨にネジ(インプラントアンカー)を埋めることが必要になります。
歯を動かすためには、テコと同じように支点が必要です。通常は、奥歯を支点にしますが、力が不足している場合、顎の骨につけたネジを支点にすることで、より効率良く歯を動かすことが可能になります。ワイヤー矯正は最も一般的な矯正治療です。それゆえ、ほとんどの症例に対して有効です。ワイヤー矯正は、ほとんどの不正咬合に対して、矯正治療を施すことができます。中でも、歯列から逸脱している歯を引っ張ったり、押し込んだりする動きが得意な矯正です。特に八重歯の矯正治療などには有効です。一方で、ブラケットを歯の表面に装着するため、笑ったときに審美性が悪くなったり、ブラケットにより口の中や唇を傷つけてしまい、口内炎が生じたりすることもあります。
近年、ブラケットは金属だけでなく、白く透明なものも開発され、審美面では改善されていますが、通常のブラケットと比較して高額なため、経済的負担が大きくなってしまいます。そして、最も注意すべきことは、装置周囲が不潔になりやすいということです。複雑で小さい構造をしているため、ブラケット周囲は汚れが溜まりやすく、落ちにくいです。これが原因となり、虫歯や歯肉の炎症を引き起こすことも少なくありません。
このように、ワイヤー矯正は適応が広く、全ての患者さまに行うことができるマルチな治療法である一方で、デメリットも多く存在します。
2.裏側ワイヤー矯正
次に裏側ワイヤー矯正について説明しましょう。裏側ワイヤー矯正は、先ほど述べたワイヤー矯正を歯の裏側に行う治療です。ブラケットを歯の裏側に装着して、歯を理想的な位置に動かしていきます。基本的な原理は、ワイヤー矯正と同じです。
この治療法の最大のメリットは、ブラケットを裏側に装着するので、審美性が矯正治療前と変わらないという点です。また、ブラケットとワイヤーを用いて歯を動かすので、ほとんどの症例に適応可能です。しかし、ブラケットを歯の裏側に装着することはとても難しい作業です。このため、装置を表側につけるワイヤー矯正よりも値段が高く設定されています。また、ワイヤー矯正以上に装置の周囲に汚れが付着しやすいです。これは、皆さんも経験があると思いますが、歯の裏側の複雑な構造とブラッシングの難しさが原因です。そのため矯正治療を行う前から、十分にブラッシングの練習を行う必要があります。
会話する時に舌が歯の裏側に接することで発することのできる言葉がありますが、裏側矯正では、舌が接する部分にブラケットが装着されているため、舌の感触が不快な時期が続いたり、言葉が喋りにくかったりすることもあります。これらは、時間が経つと慣れてくるため、気にならなくなることがほとんどですが、装置の装着初期は気になる方がほとんどです。
裏側ワイヤー矯正にも良い面、悪い面があります。これらをしっかりと理解してどれが自分に合うのかを選択することが重要です。
3.アライナー矯正
最後にアライナー矯正です。アライナー矯正という治療方法に馴染みがない人が多くいると思います。アライナー矯正は「マウスピース矯正」とほぼ同義ですので、ここでは、マウスピース矯正について説明します。
最近、メディア等で取り上げられており、皆さんも一度は「マウスピース矯正」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは、ワイヤーの代わりにマウスピースを装着することで歯を動かしていく矯正治療のことで、国内外のメーカーにより作られ、さまざまな種類のシステムがあります。
マウスピース矯正は、歯並びの状態をスキャンし、理想的な歯並びをシュミレーションします。それに合わせて作られたマウスピースを25〜30個ほど順番に装着して矯正治療を行います。透明なマウスピースを装着するため、見た目はさほど気になりません。また、歯にピッタリと装着されるため、異物感・違和感が少ないです。この点、ワイヤーを使う矯正の苦手な部分をカバーできているといえます。また、歯にブラケットを装着しているわけではなく、取り外しもできるので、歯磨きや歯と歯の間のお掃除が比較的楽になります。このようにマウスピース矯正にはワイヤー矯正にはないメリットがあります。
しかし、当然、マウスピース矯正にもデメリットがあります。
1つ目が、「装置のつけ忘れにより後戻りが生じる」ということです。歯は、絶えず元の位置に戻ろうとする性質があります。マウスピース矯正は30個ほどのマウスピースを毎日長時間装着することで効果が得られます。もしマウスピースを装着する時間が短かったり、忘れたりしては、治療効果が得られないだけでなく、後戻りの可能性もあります。したがって、毎日長時間付けるのが面倒な人や忘れっぽい人には不向きです。
2つ目が「抜歯が必要なほどのスペース不足の場合には不向き」ということです。歯並びが悪くなる原因の一つが、歯の大きさと顎の大きさの不調和です。この不調和が比較的軽度であれば、マウスピース矯正でも対応可能ですが、抜歯が必要な程に不調和が大きい場合は、マウスピース矯正では対応が難しくなります。このように全ての患者さまに適応できる訳ではないという弱点があります。
最近、人気のマウスピース矯正は、とても有用な治療法の一つです。皆さんのオプションの一つに考えてみてはいかがでしょうか。
自分にベストな治療法は?
さて、矯正治療にはたくさんの種類があるのはわかりましたか?これだけ選択肢があると、「どれが自分に最も適した治療なのかわからない」という意見が聞こえてきそうです。
自分にとってベストな治療を選択することは簡単なことではありません。これまで触れたように矯正治療にはそれぞれ得意な分野、苦手としていることがあります。
一つの決め手は抜歯の必要性です。マウスピース矯正では、奥歯を動かすことができるため、多少の歯と顎の不調和であれば改善可能です。つまり、抜歯をしたくない人は一度マウスピース矯正を考えてもよいのかもしれません。マウスピース矯正でカバーできる範囲であれば審美性も優れているので抜歯をしなくてよいということ以外にも多くのメリットを享受することができます。
ベストな治療法といっても人によって様々です。当院ではご相談いただければ、専門的な観点からベストな選択ができるようにサポートします。
まとめ
今回は、矯正治療の種類について紹介しました。それぞれのメリット・デメリットを理解して、最も適切な方法を選択していきましょう。ご不明な点や気になることがあれば、是非ともスタッフにお尋ねください。様々な治療法から患者さまのお悩みに最も適した治療を提案し、サポートさせていただきます。ご来院をお待ちしています。