マウスピース矯正とは

「マウスピース矯正してみたい!」と思っていても、どのような矯正方法なのかがわからないと不安に感じますよね。目立ちにくく審美性の高いマウスピース矯正は、多くのメリットがあり注目されている矯正治療方法です。

マウスピース矯正が一体どのようなものなのかを知りたい人に向けて、マウスピース矯正のメリットや注意点、適応症例、治療の流れなどを詳しく紹介します。

是非ともこの記事を参考にしていただき、マウスピース矯正を検討してみてください。

マウスピース矯正とは?

マウスピース矯正とは、マウスピース型の矯正装置を使用して、歯並びやかみ合わせを改善するための歯科矯正治療方法の一つです。形の異なるマウスピースを複数作製して、適切なタイミングでマウスピースを交換し、歯を少しずつ理想的な位置へ動かし歯列を整えます。

目指す歯並びの状態を歯科医師とすり合わせたのちに、歯にかかる力や角度、距離などが計算されたオリジナルのマウスピースを作製します。全体矯正する場合、一般的に30〜50枚のマウスピースが必要だといわれていますが、歯並びの状況や歯を動かす本数、距離などによって枚数は異なります。

マウスピース矯正で歯はどのように動くのか

歯の移動は、骨の新陳代謝を利用します。歯は歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる骨に支えられ、その歯槽骨と歯の根っこのあいだには、噛んだときにクッションの役割がある、歯根膜(しこんまく)と呼ばれる薄い膜があります。

矯正装置によって力が加わると歯根膜に力が伝わり、歯が動く方向の歯根膜は圧迫されて縮みます。歯根膜には一定の厚みになろうとする性質があるため、縮まった歯根膜の細胞は骨を溶かしてスペースを作り、そのスペースに歯が動きます。

反対の歯根膜が引き延ばされている側は、歯根膜の細胞が伸びている部分に骨をつくり、歯が移動した部分の隙間を埋めます。これらの働きが繰り返され、歯は1ヵ月に約0.3〜0.5mm移動します。

マウスピース矯正ができる症例とできない症例

マウスピース矯正は、すべての歯並びやあごの状況に適応するわけではありません。
それぞれ症状や口腔内の状況が異なるため、マウスピース矯正が適応するかは必ず歯科医師の診断が必要です。ここでは、マウスピース矯正が適応する症例と適応外の症例について目安を紹介します。

マウスピース矯正ができる症例

  • 歯並びの悪さ(歯の重なりがあまりない)
  • 出っ歯
  • 八重歯
  • すきっ歯
  • 受け口
  • 上下の前歯の間が空いている(開咬)
  • 噛み合わせ

マウスピース矯正ができない症例

  • 重度の歯並びの悪さ
  • 重度の出っ歯・受け口・八重歯
  • あごの骨格に問題がある
  • 重度の歯周病がある

マウスピース矯正の5つのメリット

マウスピース矯正には、次の5つのメリットがあります。

順番に説明します。

1:目立たないので審美性に優れている

薄くて透明なマウスピースを使用するため目立ちにくく、人から気付かれにくいことが最大のメリットといえるでしょう。人と接する機会が多い職業の人や結婚式などのライフスタイルイベントなど、矯正装置を目立たせたくないと考えている人には最適の方法です。

2:マウスピースの取り外しができる

マウスピースは自分で取り外しができるため、矯正していないときと同じように食事や歯磨きができます。
取り外せないワイヤー矯正では、汚れがたまりやすいので虫歯や歯周病のリスクが高まりますが、マウスピース矯正ではマウスピースを取り外して歯磨きできるので、虫歯などのリスクを回避しやすい矯正方法です。

3:痛みやトラブルが少ない

マウスピース装着時に痛みや違和感が少なく、矯正治療中のトラブルが少ないこともメリットです。
ワイヤー矯正では、矯正装置で粘膜に傷をつけてしまい痛みを感じることやワイヤーを調整して強い痛みを感じることがあります。

マウスピース矯正でも歯が動くときの痛みを感じることもありますが、ワイヤー矯正に比べて痛みやトラブルが少ないことが特徴です。

4:話しにくさが少ない

マウスピース矯正は上下の歯をすっぽりと覆いますが、滑舌への影響はほとんどなく、話しにくいなどの問題も起きにくいメリットがあります。マウスピースは薄く、歯にフィットするように作られているためです。もちろんお口の中にマウスピースを装着すると慣れるまでは違和感がありますが、2週間程度で慣れる人がほとんどです。

5:金属を使用していないためアレルギーの心配がない

ワイヤー矯正では一般的に金属を使用するため、金属アレルギーのある方はできません。しかし、マウスピース矯正は金属を使用していないので、金属アレルギーのある人や金属を口に入れることに抵抗を感じる人も、安心して矯正治療できます。

マウスピース矯正の治療の流れ

マウスピース矯正の一般的な流れを紹介します。それぞれの歯科医院やマウスピースのメーカーにより、治療の流れは変わることがあります。

1:カウンセリング・精密検査・治療プランの立案

はじめにカウンセリングをします。カウンセリングでは患者さまの歯並びの悩み、どう改善したいのか、治療方法の希望などを聞きます。また、現在の歯列の状況やマウスピース矯正、他の治療方法、治療期間、費用などを説明します。マウスピース治療について心配なことや不安なことは、しっかりカウンセリングで相談しましょう。

カウンセリングの次に口腔内を精密検査して、歯並びなどのお口の中の情報を集めます。口腔内の診察やレントゲン撮影、口腔内写真の撮影、歯の型どりなどをします。

これらの情報をもとに口腔内の状況を診断し、治療計画や契約書が作られ、後日診断結果や治療計画などについて詳しく説明を受けます。マウスピース矯正では3Dでシミュレーションができるので、矯正後の歯並びの状態を見られます。

2:契約・マウスピースの作製

診断結果や治療計画、自分の求めるゴールを歯科医師としっかり共有したのちに、契約します。
契約が終わったら、マウスピースを作製します。マウスピースを作製する会社に送り、精密検査で集めた資料をもとに、一人ひとりの歯並びに合わせて作られます。

3:治療の進行と調整

マウスピース矯正治療が始まると、1日20時間以上マウスピースを着用し、1〜2週間毎の適切なタイミングで、新しいマウスピースに交換します。マウスピースを交換するごとに、歯は少しずつ目標にしている位置へ向けて移動します。そのため、交換が終わって使い終わったマウスピースを再度使うことはありません。

マウスピース矯正中は1〜3ヵ月の頻度で歯科医院へ通院し、進行状況の確認や口腔内をクリーニングします。矯正に必要な期間は、個人差はありますが数ヵ月〜2年半ほどが目安です。

4:治療終了後のケア

マウスピース矯正で歯列や嚙み合わせが整ったあとは、歯の周りの骨が安定していないため、何もしないと歯は治療前の元の場所に戻ろうと動いてしまいます。これを後戻りといい、後戻りを防ぐためにリテーナーと呼ばれる保定装置を装着します。

保定装置の装着期間はマウスピース矯正と同じくらいの期間が目安といわれています。後戻りをしていないかなど歯列の状況を確認するため、数ヵ月に一度歯科医院へ通院が必要です。

マウスピース矯正の4つの注意点

マウスピース矯正には多くのメリットがありますが、必ず次の注意点についても知っておきましょう。

1:装着時間を守らないと歯は動かない

マウスピース矯正は、1日20時間以上マウスピースを装着する必要があり、守らないと歯は計画通りに動きません。基本的に飲食するときと歯磨き以外は装着が必要です。取り外しはできますが、自分が好きなときに装着するわけではありません。

2:装着中は飲食できない

マウスピース矯正では装着したままの飲食を想定して作られていないため、飲食する際は取り外す必要があります。マウスピースをつけたまま飲食すると、変形や破損のリスク、歯とマウスピースの間に食べかすが残り、細菌が繁殖して虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。

マウスピースを装着したまま摂取できる飲食物は水・炭酸水・ぬるめの白湯のみです。これら以外の飲食物を摂取するときは、毎回マウスピースを外す必要があり、慣れるまで面倒だと感じてしまうこともあるでしょう。

3:マウスピースやスケジュールの自己管理が必要

マウスピース矯正を予定通りに進めるためには、1日の装着時間の管理やマウスピースを交換する日など、全て自分で把握しなければなりません。
マウスピースは紛失した場合は、再度作り直す必要があるので費用や時間がかかります。取り外したときには紛失しないよう注意しなければいけません。また、マウスピースを清潔に保つための手入れも必要です。

4:適応できない症例がある

前の項目でも紹介していますが、マウスピース矯正は全ての症例に対応していません。歯並びの状況や骨格の状況などによっては、マウスピース矯正が向かない症例もあります。

まとめ

マウスピース矯正は、自分専用に作られた複数のマウスピースを、適切なタイミングで交換して歯を少しずつ動かす矯正治療方法です。目立ちにくく審美性に優れていることや、取り外しができるなどの多くのメリットがありますが、全ての歯並びに対応しているわけではありません。

マウスピースが適応できるかどうかは、自己判断できません。歯科医院で歯科医師に診断してもらうことでわかります。自分の歯並びはマウスピース矯正に適応できるのか悩んでいる人は、まずは歯科医院で相談してみましょう。