
「マウスピース矯正とセラミック矯正の違いがよくわからない」矯正方法を検討しているとき、この疑問にたどり着く人は多くいます。マウスピース矯正とセラミック矯正では、治療方法と目的が異なります。
そこで本記事では、マウスピース矯正とセラミック矯正の具体的な違いと、それぞれのメリットとデメリットについて解説します。矯正方法の選択を後悔しないために、是非ともこの記事を参考に検討してみてください。
治療方法と目的
マウスピース矯正とセラミック矯正は、そもそも治療方法と目的が異なります。
マウスピース矯正は、マウスピースを装着して自分の歯を理想の位置まで移動させる矯正治療方法です。自分の歯によって、歯並びとかみ合わせなどの機能面を改善します。
セラミック矯正は、自分の歯を削って土台にし、被せ物をして理想の歯の形にする補綴(ほてつ)治療の一つです。被せ物によって歯並びを改善します。
それぞれについて詳しく解説します。
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正とは、薄くて軽い透明のマウスピースを複数作製し、適切なタイミングで交換して、時間をかけて少しずつ歯を動かす矯正治療方法です。マウスピースは自分で取り外しができ、飲食や歯磨き以外の1日20時間以上装着する必要があります。
マウスピース矯正は、歯並びとかみ合わせなどの機能面を治療できる矯正方法です。また、マウスピースは目立ちにくく、審美性に優れているため多くの人に選ばれている矯正方法です。
セラミック矯正とは?
セラミック矯正とは、セラミックで作られた被せ物を使って歯並びを整える補綴(ほてつ)治療の一つです。自分の歯を動かすのではなく、自分の歯を削って土台を作り、被せ物で歯並びをきれいに見せるので、歯を動かす矯正治療というより審美性を重視する審美歯科といえます。
セラミックの被せ物は陶材で作られています。自然なツヤ感で見た目の美しさを保てることや金属アレルギーの心配がないこと、汚れがつきにくいなどの特徴があります。セラミックの被せ物は、形や色、サイズなど自分の希望を反映させられます。
メリットを比較
マウスピース矯正とセラミック矯正は治療方法が異なるため、それぞれメリットも異なります。
順番に詳しく説明します。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正のメリットは次の5つです。
- 矯正装置が目立たないため、審美性に優れている
- 自分の歯を大切にできる
- かみ合わせを改善できる
- マウスピースの取り外しができる
- 痛みやトラブルが少ない矯正治療方法
自分の歯を動かして歯並びを整えるため歯を大切にしながら、かみ合わせの改善ができます。歯並びが悪い人はかみ合わせの問題を抱えていることが多く、改善できると身体のバランスが整い、肩こりや頭痛などが改善されることがあります。
マウスピース矯正の最大のメリットは、目立ちにくいことです。透明のマウスピースを使用するため、見た目を気にされる人にぴったりの矯正治療方法だといえます。また、取り外しができるため食事や歯磨きは矯正治療前と同じ状態でできることも大きなメリットといえるでしょう。
薄くて軽いマウスピースは歯にピッタリとフィットするため、滑舌への影響が少なく、ワイヤー矯正に比べて痛みや違和感、トラブルが起きにくい矯正方法です。
セラミック矯正のメリット
セラミック矯正のメリットは次の5つです。
- 治療期間が短い
- 矯正器具装着が必要ない
- 好きな歯の形や色を選択できる
- 治療中の見た目が気にならない
- 後戻りしない
セラミック矯正は治療期間が短く済むので、時間をかけずに整った歯並びを実現できます。また、矯正装置を装着する必要がないため、矯正装置によるトラブルや通院は必要ありません。被せ物の色や形を自分で選択できるので、理想の口元を短期間で実現します。
治療中は、セラミックの被せ物を作る間は仮歯をつけるため、見た目への影響はありません。周囲へ気づかれることなくセラミック矯正治療を進められます。
自分の歯を動かす歯科矯正治療方法では、治療を終えたあと歯が元の位置に戻ろうします。これを後戻りといいます。この後戻りを防ぐためには、リテーナーと呼ばれる保定装置を一定期間は付ける必要があり、矯正装置を外してもリテーナーの装着期間が必要です。
しかしセラミック矯正は、自分の歯を動かさないため後戻りする心配はなく、リテーナーをつける必要もありません。
デメリットを比較
マウスピース矯正とセラミック矯正、それぞれの矯正方法にはデメリットもあります。
しっかり把握して比較検討しましょう。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正のデメリットは次の6つです。
- 治療に時間がかかる
- 治療に痛みや話しにくさを伴うことがある
- 後戻りする可能性がある
- 治療できない症例がある
- 1日20時間以上の装着が必要
- 自己管理が必要
マウスピース矯正は少しずつ時間をかけて自分の歯を動かすため、治療に時間がかかります。奥歯を含む全体を矯正する場合は、歯並びの状況によりますが1〜3年程度の期間が必要です。また、矯正治療後は、後戻りしてしまう可能性が高いため、リテーナーの装着が必要です。
ワイヤー矯正に比べて痛みなどのトラブルは少ない矯正方法ですが、全くないとはいえません。マウスピース矯正を始めたばかりの時期やマウスピースを新しく交換するときは、歯に力が加わるため痛みが出やすくなります。また、マウスピースを装着していることに慣れるまで違和感があり、話しにくく感じることもあります。
マウスピースは1日20時間以上装着しなければ、歯は計画通りに動きません。矯正治療をスムーズに進めるためには、マウスピースの装着時間や交換のタイミング、清掃などの自己管理が必要です。
セラミック矯正のデメリット
セラミック矯正のデメリットは次の5つです。
- 健康な歯を大きく削る必要がある
- 歯の神経を抜く場合がある
- かみ合わせは改善できない
- 虫歯や歯周病のリスクが高まる
- 被せ物は永遠ではないため作り直しが必要
セラミックで作られた被せ物を作るために、自分の歯を削らなくてはいけません。一部の症例では、歯の神経を抜かなければいけないこともあります。神経を抜いた歯は、栄養が行き渡らないので歯は弱くなってしまいます。削った歯や抜いた神経は2度と元には戻りません。
セラミック矯正は審美性を重要視しているので、前歯の微調整などは問題ありませんが、かみ合わせを改善したいと考えている場合に改善は難しいでしょう。
時間が経過すると、被せ物と歯ぐきの間に段差ができてしまうことがあります。その段差部分に食べかすや歯垢(プラーク)が残りやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、被せ物は永遠に使えるわけではありません。歯ぎしりや硬いものを食べることなどで、ヒビが入ることや欠けることもあります。被せ物はしっかり手入れをすると10年以上使えますが、いつか作り直す必要があるため、再度コストがかかります。
健康保険は適用されない?
マウスピース矯正とセラミック矯正には健康保険が適用されません。
この2つの矯正方法に限らず、審美性を目的としている歯列矯正には健康保険が適用されません。
自費診療になり、それぞれの歯科医院によって治療費用が異なります。
歯列矯正が保険適用となるケースは、生まれつきあごの骨の形に異常があるケースなど厚生労働省が定めている疾患に該当する場合や乳歯から永久歯に生え変わる頃に永久歯が歯ぐきのなかに埋まったまま出てこない場合で起こるかみ合わせの問題、顎変形症によってかみ合わせに問題のあるケースです。
マウスピース矯正は、比較的軽度な症例に対応している矯正治療方法のため、保険適用されることはほとんどないといえます。
参考:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは(公益社団法人 日本矯正歯科学会)
どちらの矯正方法がいいのか?
マウスピース矯正とセラミック矯正はどちらがよいのか迷う方も多いと思います。
そもそもマウスピース矯正とセラミック矯正は治療方法と目的が異なります。そのため、どちらかで悩んでいる場合は、自分の目的・治療のゴールを明確にしましょう。どちらがよいのかは、それぞれ個人の歯並びの状況や目的・治療のゴールによって決められます。
例えばマウスピース矯正では、歯の形や色を変えられないため、歯の大きさを変えたい場合やとにかく短期間で治療を終えたい人はセラミック矯正がおすすめです。しかし、自分の歯を大幅に削りたくない人や、かみ合わせ、話すなどの機能面も一緒に治療したい人には、時間はかかりますがマウスピース矯正がおすすめです。
どちらの矯正方法もメリットとデメリットがあります。それらを踏まえて、どちらの方が自分にとって合っているのかをしっかり考えましょう。
自分に適した方法を見つけるには
自分に適した矯正治療方法を見つけるためには、歯科医院での相談がおすすめです。そもそも自分の口腔内の状況がどの矯正方法が向いているのかは、カウンセリングや検査を受けなくてはわかりません。
また、自分の歯並びの状況や目的、治療のゴールなどを踏まえプロからのアドバイスを得ると、納得のできる矯正方法を見つけられるでしょう。さまざまな情報がありますが、口腔内の状況は人それぞれ異なります。自己判断では自分に適した治療方法を決定することは難しいです。プロに相談するのが近道といえます。
まとめ
マウスピース矯正は、自分の歯をゆっくり動かして、歯並びとかみ合わせを改善する矯正治療方法です。セラミック矯正は、自分の歯を削って土台を作り、その上にセラミックの被せ物をして歯並びを整えて見せる補綴(ほてつ)治療の一つです。セラミック矯正といわれていますが、歯を動かす歯科矯正治療とは異なります。
それぞれには多くのメリットやデメリットがあります。後悔しない選択をするためにも、まずは歯科医院で相談してみましょう。当院ではマウスピース矯正のカウンセリングを行っており、患者さまの目的と治療のゴールをすり合わせて、マウスピース矯正治療をしています。是非とも、お気軽にお問い合わせください。