2024.04.15
2024.05.08

口元もっこり!口ゴボの原因や治療(治す)方法

 

 

現在日本人の多くの方が、歯並びに悩みを抱えているといわれています。
厚生労働省の報告では、約半数以上の方が何らかの不正咬合を有しているとされています。
一昔前までは、虫歯、歯周病の治療こそが歯科医師の仕事とされていました。
しかし近年、それらの治療はもちろんのこと、その他にも矯正歯科などの審美歯科についても相談を受ける機会が増えてきました。
その中、今回は「口ゴボ」について説明します。

口ゴボって何?

そもそも「口ゴボ」とはどのような状態を指す言葉なのでしょうか。
顔を横から見たときにEラインと呼ばれる①鼻の先端(鼻尖)、②上唇、③下顎の最も突出した部分(オトガイ部)を結んだ時の線が、一直線上あることが美しい横顔、理想とされています。
このEラインよりも唇の部分、特に②上唇の部分が突出している状態を「口ゴボ」といいます。
また③のオトガイ部が突出していれば、いわゆる受け口、下顎前突の状態です。
口ゴボは、歯科の専門用語では「上顎前突」と呼ばれます。これは文字どおり、上顎が前に突出している状態です。
この上顎前突は、最も一般的な不正咬合の一つで、多くの方にみられる状態です。

口ゴボの原因

次に、口ゴボ(上顎前突)の原因について説明します。
不正咬合の原因は、大きく分けて3つあります。

  1. 骨格性の問題
  2. 歯性の問題
  3. 機能的な問題

これら3つの原因が単独、あるいは複雑に絡みあって一つの病態を現します。詳しく説明します。

①骨格性の問題

まずは、骨格的な問題です。顔面の骨は14種類の骨で構成されています。
中でも、不正咬合に関与するのは上顎骨と下顎骨です。
これらはそれぞれ、上顎と下顎を造っている骨で、この2つの骨の成長が釣り合っていれば、キレイな歯並びを手に入れることができます。しかし不釣り合いな成長では、不正咬合や顔貌の不調和が生じます。
上顎骨が成長しすぎたり、上顎の大きさが正常であっても、下顎の成長が通常よりも悪かったりすると、相対的に上顎が大きすぎることになり、口ゴボが生じます。
なぜこのような成長の不調和が生じるのでしょう。先天性疾患の一つの症状として上顎が過度に成長したり、下顎が十分に成長できなかったりすることもありますが、どのような機序で上顎の骨の過成長や下顎の骨が十分に成長できない状態が生じるのかその原因は、多くの場合で判明していません。

②歯性の問題

次に歯性、つまり歯の問題です。いわゆる歯並びが悪いために口ゴボが生じてしまいます。
この状態は大きく分けて「叢生」と上顎の前歯の「唇側傾斜」があります。
「叢生」とは矯正の専門用語で、「歯並びがガタガタで、歯と歯の重なりがある状態」を指します。上あごの歯並びがガタガタで、特に前歯が本来の歯並びの位置よりも外側に位置している時に、口唇が突出した状態になります。
この叢生が生じる原因は、「スペース不足」といわれています。歯は顎の骨の中に埋まっています。歯の大きさと顎の大きさに不調和が生じ、スペースが不足すると、歯は本来の位置とは異なった位置に生えてしまいます。
これが複数の歯にわたることで、叢生が重症になり、より口ゴボが目立つようになってしまいます。

「唇側傾斜」とは、「歯が唇方向に傾いている状態」です。歯の長軸のことを「歯軸」といいます。この歯軸にも適切な角度が存在しますが、この歯軸が唇方向に倒れてしまうことで唇が突出した状態になることがあります。
唇側傾斜の原因は、様々な要因が絡むため、一つの原因にしぼることは難しいです。詳細は次の機能面で説明します。

③機能的な問題

矯正歯科の専門的な問題点の分析では、「機能面」として分類されています。簡単にいうと、お口の周りの筋肉が本来の機能よりも過度に働く、あるいは適切に働かないことによって本来の位置に歯が並べなくなることなどから機能的な問題生じます。例えば、お口ポカンの状態といった「口唇閉鎖不全」や舌を前に出す癖のある「弄舌癖」、指しゃぶりが原因として挙げられます。

お口ポカンの状態は、「口唇閉鎖不全」と呼ばれ、近年、子どもたちに多くなっていることが問題になっています。
この状態は、唇を閉鎖する「口輪筋」の筋力が弱いために、普通の状態でも、唇が完全に閉鎖しきれなくなってしまうことで発症します。
唇周囲の筋肉が弱いため、前歯が舌側から押されるようになり、結果的に前歯が唇側傾斜してしまいます。

「弄舌癖」はベロをベーっとする癖が子どもの頃から抜けず、大人になってもつい癖でやってしまうことです。
この場合、ベロを前に出すごとに、前歯が舌によって前方に押され、長い年月をかけて、唇側傾斜が進んでいきます。
また子供の頃の「指しゃぶり」も歯並びに大きな影響を及ぼします。指しゃぶりをすると、指の力で前歯には唇方向の力がかかります。また、指を吸うときのほっぺたの筋肉の力によって、全体的に歯並びが狭くなります。
本来馬蹄形の歯並びが、指しゃぶりを行うことで縦伸びした三角形に近いような形になります。そうなると顔貌全体も前方に突出した形になり、なおかつ、前歯が唇方向に倒れることで、骨格的にも歯性的にも影響を及ぼします。


このように、お口の周りの筋肉の異常は、歯並びに大きな影響を及ぼします。特に小児期の発達・成長段階では、正しい成長が阻害されてしまうため、大人になったときに「口ゴボ」となってしまうことが起こり得ます。
このため、小児期の矯正治療も検討することで、将来起こり得るリスクを少しでも小さくしておくことが大切です。

口ゴボのデメリット

「口ゴボ」は見た目が悪いということだけではなく、実は歯や歯ぐきなどの歯周組織にも悪影響を及ぼすことが知られています。次に紹介します。

①口の中が乾燥する

唇が閉じ切らないために、口の中が乾燥します。諸悪の根源はこれです。
口の中が乾燥すると、さまざまな悪影響を及ぼします。一例ですが、かぜなどの上気道感染を起こしやすくなります。
唾液には、お口の粘膜や喉の粘膜を保護する働きがありますが、口が乾燥するとこのバリアが弱くなってしまい、ウイルスや細菌が上気道に感染しやすくなります。

②歯肉の炎症を起こしやすい

口腔内の乾燥が進むと、歯ぐきが細菌に抵抗する力が弱くなったり、細菌が繁殖しやすくなったりします。
これによって歯周病の原因菌が異常に増殖してしまい、歯ぐきの炎症が進行してしまいます。

③口臭の原因になる

お口の乾燥がひどくなると細菌が増殖します。増殖した細菌により、口臭が強くきつくなります。

④歯に色がつきやすい

特に前歯で生じます。唇からはみ出た部分と口の中にある部分とでハッキリと境目ができることが特徴です。
唾液の自浄作用が行き届かないことや外気にさらされ続けることで生じます。

このように、口ゴボには、見た目が悪くなる以外にも歯や歯を支える歯周組織にも悪影響を及ぼします。
歯ぐきの炎症である歯周炎は、成人の歯を失う原因の多くを占めています。
見た目の改善はもちろんですが、それ以上に自分の歯を守るためにも、「口ゴボ」は治療をすることをお勧めします。

口ゴボの治療法

口ゴボの治療法は大きく分けて矯正治療、被せ物による治療、美容医療がありますが、今回は、矯正治療と被せ物の治療を紹介します。
矯正治療は器具を用いて、歯並びを改善することを目的としています。矯正方法には、ワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。歯を動かすことで唇側傾斜を改善したり、指しゃぶりなどの悪習慣を防いだりすることで、口ゴボの原因を除去します。さらには、骨格的な問題がある場合は、手術によって、骨を正しい位置に移動させることもあります。詳しい治療法については、しっかりと検査をし、正しい診査診断の後に決定されるため、まずは、矯正医に相談しましょう。
被せ物での治療法では、唇側傾斜した歯を被せ物によって擬似的に正しい角度にします。この方法では矯正治療を必要とせず、比較的短期間で治療が終了します。しかし、骨格に問題がある場合は、根本的な問題が解決されないため、十分に改善できないことがあったり、被せ物と入れるために健康な歯を削る必要があったりとデメリットも存在します。 全ての治療にはメリット・デメリットがあります。気になる方は一度矯正医に相談しましょう。

まとめ

今回は「口ゴボ」について解説しました。特に若い女性を中心に注目されている口ゴボですが、その原因はさまざまです。また、口ゴボは見た目だけではなく、歯や歯ぐきにも悪影響を及ぼすことがあり、治療を行うことで得られるメリットが非常に多く存在します。気になる方は、一度、矯正医に相談してみてはいかがでしょうか。
ご来院をお待ちしています。